心臓弁膜症・心雑音

心臓弁膜症・心雑音について
定期健診と聴診で早期発見を
心臓には、血液の流れを一方向に保つための「弁(バルブ)」が4つあります。
これらの弁が狭くなったり(狭窄)、きちんと閉じなくなったり(閉鎖不全)することで、心臓に負担がかかる状態を「心臓弁膜症」といいます。
弁の異常があると、血流の乱れによって「心雑音」という音が聴こえることがあり、健診などで指摘されることも少なくありません。
心雑音の中には問題のないもの(機能性雑音)もありますが、なかには心不全の原因となったり、状態によっては突然死のリスクにつながる弁膜症が隠れている場合もあります。
こんな症状でお悩みでは
ありませんか?
心臓弁膜症が進行すると、次のような症状がみられることがあります。
- 少し動いただけで息切れする、階段や坂道がつらい
- 動悸や脈の乱れを感じる
- 足のむくみ、体重の増加(むくみが増えた感じ)
- 胸の圧迫感や痛み、締めつけられるような感じ
- 横になると息苦しい、夜間に息苦しくて目が覚める
- 疲れやすい・だるい・以前より体力が落ちた
- 失神や意識が遠のくようなことがあった
※一方で、自覚症状がほとんどないまま、健診で「心雑音」を指摘されて初めて気づくケースもあります。
「心雑音がある」と
言われた方へ
心雑音=必ず重い病気、というわけではありません。
年齢・貧血や発熱・体格・血流の速さなどによって一時的・機能的な心雑音が聴こえることもあります。しかし、
- 大動脈弁狭窄症
- 大動脈弁閉鎖不全症
- 僧帽弁閉鎖不全症
- 僧帽弁狭窄症症
などの弁膜症では、進行に伴い心不全の原因となったり、不整脈を介して脳梗塞や突然死のリスクにつながることがあります。
心雑音を指摘された場合には、一度心エコー(心臓超音波検査)で弁の状態を確認しておくことが大切です。
主な心臓弁膜症
大動脈弁狭窄症・大動脈弁閉鎖不全症
心臓から全身へ血液を送り出す「大動脈弁」に障害が起こる病気です。
- 大動脈弁狭窄症
- 弁が狭くなり、血液が通りにくくなる
- 大動脈弁閉鎖不全症
- 弁がきちんと閉じず、血液が逆流してしまう
進行すると、息切れ・胸痛・失神・心不全の原因となり、状態によっては突然死のリスクが問題になることもあります。
僧帽弁閉鎖不全症・僧帽弁狭窄症
左心房と左心室の間にある「僧帽弁」に障害が起こる病気です。
- 僧帽弁閉鎖不全症
- 弁がしっかり閉じず、血液が左心房側に逆流する
- 僧帽弁狭窄症
- 弁が狭くなり、左心房から左心室へ血液が流れにくくなる
進行すると、息切れ・動悸・心房細動(不整脈)・心不全などを引き起こします。長期間放置すると心臓の負担が大きくなり、治療の選択肢が限られてしまうことがあります。
三尖弁・肺動脈弁の病気
右心系にある弁に障害が起こると、足のむくみ・腹水・肝臓の腫れなど、右心不全の症状が目立つことがあります。
原因や重症度によって、経過観察から外科的治療まで幅広い対応が必要です。
検査について
心臓弁膜症が疑われる場合、次のような検査を組み合わせて評価します。
| 診察・聴診 | 心雑音の有無や性質、心不全のサイン(むくみ・肺うっ血など)を確認します。 |
|---|---|
| 心電図検査 | 不整脈(心房細動など)の有無や、心筋への負担の程度を評価します。 |
| 胸部X線検査 | 心臓の大きさや、肺うっ血の有無などを確認します。 |
| 心エコー(心臓超音波検査) | 弁の形や動き、逆流や狭窄の程度、心臓のポンプ機能などを詳しく評価する、弁膜症診断の中心となる検査です。 |
| 血液検査 | 貧血・腎機能・炎症反応などに加え、心不全の指標としてBNP/NT-proBNPなどが用いられます。 |
これらの情報を総合して、弁膜症の種類・重症度・治療方針を検討します。
治療とフォローアップ
心臓弁膜症の治療方針は、「弁膜症の種類」「重症度(軽症〜重症)」「自覚症状の有無」「心不全や不整脈の有無」「年齢や全身状態」などを総合して決定します。
内科的治療(薬物療法・経過観察)
軽症〜中等症で症状が乏しい場合には、定期的な心エコーと診察による経過観察を基本とします。必要に応じて、
- 利尿薬
- 血圧や心拍数を調整する薬
- 心房細動がある場合の抗凝固薬(血栓・脳梗塞予防)
などを組み合わせ、心臓への負担を減らし、心不全の悪化を防ぐことを目標に治療します。
外科的治療(弁形成術・弁置換術)
重症の弁膜症や、症状が進行している場合には、外科的開心術による治療が必要となることがあります。手術では、弁の状態に応じて、
- ご自身の弁をできるだけ残し、縫い縮める・形を整えることで機能を改善する弁形成術
- 障害された弁を取り外し、「人工弁」に置き換える弁置換術(機械弁・生体弁 など)
のいずれか、あるいは組み合わせが選択されます。年齢や他のご病気、ライフスタイルなどを総合的に考慮し、心臓外科の専門医と相談しながら最適な方法が検討されます。
カテーテル治療
近年は、胸を大きく開かずに行うカテーテル治療も選択肢となってきています。
特に大動脈弁狭窄症では、足の付け根などの血管からカテーテルを挿入し、狭くなった弁のところで新しい弁を広げて留置する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が行われる場合があります。
僧帽弁閉鎖不全症(MR)や三尖弁閉鎖不全症(TR)でも、一部の症例ではカテーテルによる弁修復術など、開胸手術に比べて体への負担を抑えた治療が検討されます。
高齢の方や、開胸手術の負担が大きいと判断される方で選択されることが多く、患者様の状態やご希望を踏まえ、専門医と相談しながら治療方針を決めていきます。
日常生活で気をつけたいこと

心臓弁膜症は、ゆっくり進行することが多く、自覚症状だけでは変化に気づきにくい病気です。
- 息切れやむくみ、動悸などの変化
- 体重の急な増加(むくみの増悪)
- 失神発作、強い胸痛、急な呼吸困難
といった症状がみられた場合には、早めの受診が大切です。
「健診で心雑音を指摘された」「弁膜症があると言われたが、その後きちんとフォローされていない」「最近息切れが強くなってきた気がする」といった場合は、一度現在の状態を評価し、どのくらいの間隔で経過をみていくか、どのタイミングで治療を検討すべきかを一緒に確認していきましょう。